美容室を開業する時に法人で始めるのか?個人事業で始めるのか?と言う疑問があるかと思います。
結論から言いますと、大きな規模でない限り、初めは個人事業主で良いと思います。
では、今回はその理由や法人、個人事業主の違いを書いてみたいと思います。
個人事業主メリット
・開業手続きが簡単
・確定申告が法人より簡単
・一定の所得までは、個人事業主の方が税金が安い
・資金負担が大きくなる社会保険への加入は任意
・廃業する場合も法人より簡単
メリット | デメリット |
・開業手続きが簡単 ・法人に比べると税金計算が簡単 ・収益が少ないうちは税金が安い | ・信用度合いが弱い ・所得が増えると税金が高くなる ・経費に認められる範囲が狭い ・責任は個人が全て背負う |
などのメリット、デメリットがあります。
収益が少ないうちは個人事業主が税金が安いと覚えておこう!
法人メリット
・経費計上範囲が広い
・社会的信用が高まる
・所得が高くなれば法人化した方が税負担を抑えることができる
・求人の時に厚生年金などの理由で選ばれやすくなる
メリット | デメリット |
・社会的信用力が高い ・税金対策の手段が多い ・経費に計上できる範囲が広い ・経営が悪化しても有限責任にできる | ・設立の手続きが面倒 ・設立に初期費用がかかる ・赤字でも税金がかかる |
などがありますが、法人住民税が赤字でも払わなければならない、社会保険料の負担が大きい、経理や事務手続きが増えるなどのデメリットもあります。
お店の規模を大きくしたり、求人したい場合は法人化を考えよう!
個人事業主の手続き
開業届の提出
開業届は、個人事業を開業したことを税務署に申告するための書類です。
開業届の提出期限は、開業してから1ヶ月以内と決められています。
開業届を提出をしていないと、確定申告の際に青色申告ができないため、年間の収入から経費と青色申告特別控除の65万円の控除が出来なくなります。
赤字が出た場合に3年間の繰り越しができなくなってしまいます。
青色申告承認申請書の提出
個人事業主の確定申告には白色申告と青色申告と言うものの2種類があります。
白色申告ではメリットはほとんどないですが、青色申告で確定申告をすると最大65万円の特別控除を受けられます。
青色申告を行うためには帳簿を複式簿記で記帳しなければならない、貸借対照表、損益計算書の提出などの条件があります。
面倒ではありますが、65万円という大きな控除金額のために、できるだけ青色申告承認申請書を提出して青色申告をする方が良いと思います。
僕は会計ソフトの「freee」を使っています。
青色申告承認申請書は開業後2ヵ月以内に税務署に提出しなければなりません。
国民健康保険、国民年金に加入
以前の働いていたお店を退職をして個人事業主になる場合の公的保険は、国民健康保険に加入するか、今まで働いていた会社の健康保険を任意継続するかのどちらかになります。
年金も厚生年金の場合は国民年金に変わるので、市役所に行き新しく加入の手続きを行わなければなりません。
厚生年金と比べると、国民年金の年金受取額は少なくなるので、老後の生活資金に関しては自分なりに備えていかないといけません。
老後の資金は個人事業主なら小規模事業共済、NISA、iDeCo、国民年金基金などで、ご自分の方針に合うもので検討すると良いと思います。
個人事業主と法人の違い
個人事業主と法人の違いをまとめてみました。
個人事業主 | 法人 | |
事業開始手続き | ・開業届の提出 ・青色申告希望者は青色申告承認申請書も提出 | ・法人登記 ・必要書類や会社印の用意 |
開業までにかかる費用 | 0円 | 法定費用+資本金 株式会社 約25万円~ 合同会社 約6万円~ |
事業の廃止をする場合 | 届け出を出す | 解散登記、広告等が必要(数万円ほど) |
税金 | ・所得税 ・住民税 ・消費税 ・個人事業税 所得税は利益が多いほど税率が高く控除が少なくなる | ・法人税 ・法人住民税 ・法人事業税 ・地方法人特別税 ・消費税 など 法人税は所得税よりも税率が穏やかだが、赤字の場合でも法人税がかかる |
経費 | ・事業にかかる費用は計上できる ・自分への給与や生命保険料は経費にできない | ・事業にかかる費用以外に自分の給与や退職金も経費として計上できる ・経費に認められる範囲が広い |
赤字の繰越 | 3年(青色申告の場合) | 9年 |
社会信用度 | ・法人に比べて低い ・事業を行う上での支障はない | ・高い ・新規の契約や融資にも有利になる |
会計・経理 | 個人の確定申告 | 法人決算書・申告 (税理士が必要になる) |
生命保険 | 所得控除 | 全額経費 |
社会保険 | 会社負担分なし | 会社負担分あり |
税金の違い
個人事業主と法人では払わなければならない税金が違ってきます。
個人事業主
- 所得税
- 住民税
- 消費税
- 個人事業税
法人
- 法人税
- 法人住民税
- 消費税
- 法人事業税
個人事業主や法人の所得税や法人税にかかる利益と言うものは、1月1日から12月31日までの事業の売上げの合計額から、必要経費、所得控除を差し引いた金額になります。
個人事業主の場合、所得税は累進課税となっており、利益が大きくなるほど税率も高くなります。反対に控除は少なくなり、法人に比べて必要経費として認められる幅も狭くなります。高収入の場合、収入の約半分くらいが税金として払わなければならない場合もあります。
法人税は、資本金や所得によって税率が変わりますが、所得税に比べて税率が穏やかなので最大税率も23.2%です。
個人事業主であれば赤字経営となってしまった場合は所得税や住民税の支払いはありませんが、法人の法人住民税は、資本金などをもとにした均等割部分がもしも赤字であった場合も支払いが発生します。
個人事業主の税金計算
個人事業をしていくにあたり税金の計算方法について理解している方が良いかと思います。
そこで以下の表を載せています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
上の図ように、所得税は累進課税制を採用していますので、所得が大きくなるにつれて税率も高くなっていくという仕組みになっています。所得が大きくなるほど、個人事業主が支払う税金も大きくなっていきます。
これに対して、法人税の税率は資本金1億円以下の法人であれば、800万円以上の所得に対しては23.2%となっています。800万円以下の所得に対しては過去の所得に応じて15%または19%のどちらかの税率が適用されます。
これらのことから、所得に課せられる税金については、一定の所得を超えてくると税率上では法人の方がメリットがあるのが分かると思います。個人事業主で事業を行うのか、法人を設立するのかについては税金面のことをよく考えた上で判断するようにしましょう。
税金のことを理解しないと、どちらが良いのかが分かりにくいよ!
税金に関しては美容室経営で払う税金の記事もあるよ!
まとめ
どちらもメリット、デメリットがありますが、小さなお店では個人事業主で始めることで良いと思います。
事業が大きくなるにしたがって法人化すると良いでしょう。
法人化のタイミングは業種や売上などによって様々ですので、会計士さんに相談するのもオススメです。